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※ネタバレ感想「魔法の国の豆スープ」

  • Seo Ann
  • 2019年2月21日
  • 読了時間: 4分

せんさんの「魔法の国の豆スープ」、読了しました!

コミティアがあるたびに新刊が発売されて、ついに最終巻をお迎えさせていただいて……よかった、追いかけていて本当によかった。

一巻の初見は、日常ほのぼの系かな~?だったんですが、でも冒頭でのテンテの鬼気迫る(切羽詰まる?)表情に、きっとただのほのぼのでは終わらないぞ……と思ったりもしてました。だってほら、せんさんだし……!(「火の影を踏む」のときからずっとファン)


一話一話、せんさんのメッセージが込められたお話だと思いました。(せんさんの意図したとおりに読み取れてるかは自信ないですが)

カルルンとアドくん、イサラとナターシャ。それぞれのこどもたちの気付きが、読んでいる私の心にもはっとするような気付きを与えてくれるようでした。

イサラとナターシャの関係も好きだなあ……特にナターシャの自信がないのにイサラの期待に応えようとしちゃって辛くなっちゃうとことか、でもその自身のなさって自分を信じてくれてるイサラを信じてないってことになっちゃってもだもだしてイサラ避けちゃうとことか、なんかわかるわぁ……って勝手に親近感(笑)せんさんは人物の関係性を描くのほんとに巧みなんですよねほんと好き。激熱な番長も最高です!


ニルバ姫の話もよかった……。カルルンとの「ぼくたちはこどもだ」から、ニルバの「もうこどもじゃない」のやりとり。何の肩書にもとらわれずに、そのひと個人を「ひとりの人間」として接することのできるカルルンの在り方はとても純粋で好きです。でも、大人であることを選択するニルバと道は交わらず……「大人」は、肩書や身分や責任、いろいろ余計なものに雁字搦めにされるけど、それでもそれを選ばざるを得ない時もある。

うーーーん、うまく言語化できないんだけど、なんかこの夕日のシーンは胸に来るものがあった。カルルンのように、誰かをなにかの「枠」にはめずに相手を素のままで見ること、自分にはできるのかな……?


ニルバとのことをきっかけに色々調べ始めるカルルンにアドくんが話しかけるシーン、良きです。アドくんこのときから何気に世話焼き性なのぽろっと出てるよね(笑)

一巻で子どもたちの日常から、二巻でカルルンの歩む方向性が構築されて、三巻で大きな転機……三巻の展開は辛かった……。奥付のところのテンテの切られたおさげが、切なかった……。

三巻のラスト、カルルンは姿を消してしまうけど……このときはどうしていなくなってしまたのかはわからなかった。ボジェクのように利用されないためなのかなとか、ラストに少しだけ出てたなぞの手の人に、なんらかの理由で逃がされたのかなとか思ってたけど違かった。全然違かったんだ……。

カルルンは、逃げたんじゃなかった。人を助けるためにその場を去っただけだった。

あんな状況でも誰かのことを考え、心配し、そして行動に移せるカルルン、本当にすごいよ……。

一~三巻での出来事が、本当に見事に四巻に集約されていて感動しました。

「どんな大きなできごとも、もとをたどるとたったひとつの、小さな出会いがきっかけだったりする」──まさにこのコピーの通りだった。

アドくんはカルルンと出会って心境の変化がなかったら、きっと図書館でカルルンを手伝わなかったし、テンテのことも助けなかったんじゃないかな。

イサラとナターシャに出会わなかったら、たぶんテンテはカルルンに自分の価値を依存してるばかりで、カルルンのとこをただ「好き」なんだってことに気付かなかったんじゃないかな。

ニルバと出会わなかったら、カルルンの姿を隠す魔法もなかったし、皇子を助けることもなかったんじゃいかな。

ぜんぶぜんぶ、繋がっていく。

ほんとうにすごい……感動した。

私もカルルンたちに会えてよかった……この「まめすぷ」を描いてくれたせんさんに感謝……!

ラストの「豆のスープ」のエピソードも良い……!!(こればっかり!語彙とは……?笑)

とてもカルルンらしいなって、思うと、あの子のこと本当に好きになる……。もうまめすぷに出てくる子たちみんな好き……!

あと第四皇子めっちゃいいやつでよかった!!よかったねニルバーーー!!(泣)


あと、私ほんとにせんさんの絵が好きでしてね!!!

この四巻の表紙、カルルンとテンテが昔駆けあがっていった階段ですよね? たぶん。そしてテンテがカルルンの何を見てきたのかと気付くテラス(?)へ続く階段でもあって……窓から溢れる光が、ほんとうに美しかった。希望の光みたいだった……

ここぞ!っていうシーンでの、人物たちの表情もすごくいいんだ。四巻ではP34とP54のテンテの表情がとてもすき。ラストのカルルンの笑顔も!!いやむしろもう私全シーン好きだといっても過言ではない。←


ところで皇子がつけてたピアスって、カルルンのピアスですかね……?(違うかもですが)(でもラストのカルルンピアスの穴だけだったし)そうだったら、なんか嬉しいなあ……!

あとあと、アドくんが一年もテンテのお世話をかいがいしく焼いてたかと思うと、もう……!あれなんて沼?


なんだかなに言ってるかよくわからない感想文ですが、とにかく面白かったです!!

素敵な物語をありがとうございました!

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