日崎アユムさんの「イヤサカ」、読了。
- Seo Ann
- 9月18日
- 読了時間: 3分
更新日:9月20日
ネタバレ感想なので未読の方はご注意を。
この作品を知ったきっかけは、Xかブルスカのポストだった。丁度、ずっと書いていた自作が手を離れ、誰かの創作物を摂取したいなという気持ちが強かった時期。毎日流れてくる更新ポストに、興味を引かれたのがきっかけだったと思う。
山の民の長、女王ナホは、実は女装した少年で、家臣の女戦士ノジカと婚約していた――という作品紹介に、初見は「???」という印象だった。どういうこと?と。気になって読み進めていくと、なぜナホは女王を演じねばならぬのか、ということがわかってきて面白かった。
大切なノジカをアラクマから取り戻そうと、主張せぬ少年女王から、ひとりの青年へと成長していく様を、毎日追いかけていくのが楽しい読書体験だった。ノジカを取り戻そうとして戦の引き金を引きかけた(あるいは引いた)けれど、女王として女神の怒りを鎮めるためにひとり社に向かったシーンはとてもよかった。大人になって女王としての力は失ったけれど、女神との絆を失わせず事態を治めたのは、ナホのこれからの統治者としての良い兆しだなぁと思ったりなどする。また私は登場人物の決意を表す際の断髪が大変な好物なので、ナホの断髪シーンはにやっとしてしまった……!
ノジカは、最初から最後までとても格好いい女性だった。戦のせいで被害を受けたカンダチ族が復興するまで山に帰らないと宣言したノジカが、花嫁衣裳で山に帰るエピローグは、私も心中で「弥栄~~~!!」と叫ばずにはいられなかった。山も海もひとつに、そして末永くナホと幸せになってください……!
硬派そうで真面目なアラクマと、親しみやすく剛健なオグマ。どうしてふたりは部族を二分するほど仲違いしてしまったのだろう、と思っていたが……一人の女性ククイを取り合ってのことだったのか、と知った時、「もしやこの作中で一番こどもなの、この二人では……?」と思ったりなどしてしまった(すいません)。双子はどちらも絶対に譲らないという性格を熟知したククイが、最も丸く収めるために二人と通じたのに、アラクマがオグマを人質として村を追い出したらそりゃ激怒しますよね……。はじめは、ククイはオグマの妻だからそんなに怒ってたのかな、と思ったけどそうではなかった。もっと根深い問題だった。
ククイが最高にできた強い女性じゃなかったら、カンダチ族は山の民と争わずとも崩壊していたのでは……。最後、双子に本音で向き合わせ、仲直りさせた彼女は、二人の妻になる女性としてだけでなく、まさしくカンダチ族の母のように思えた。ククイの支えがあれば、二人は互いの足りない部分を補い合いながら、立派な族長になれるのではなかろうかと思うなどした。
日崎さんの書くキャラクターは、みんな生き生きしていて、個性があって好きです。読んでいて楽しく、感情移入しやすいです。
個人的な話ですが、最近は「同人誌」という物理形式で作品を読むことが多かったので、久しぶりにウェブ小説を追いかけるという、楽しい体験をさせていただきました。
とても面白かったです。
更新作業お疲れさまでした。そして楽しい時間をありがとうございました!

コメント