「聖らかなるもの」読了。
- Seo Ann
- 2020年9月28日
- 読了時間: 2分
八束さんの「聖らかなるもの」、読了しました。
なんだか……凄かった。語彙が乏しくなるほどに……。
架空アフリカ系民族のナパタ族のナサカと、メロエ族のフォロガングの、ふたりの女性を軸とした物語。
まず舞台設定がすごくて、ほんとうにアフリカに存在していた部族なのかと思うほどに描写がリアルだった。割礼の習慣や、男尊女卑が根付いた日常、誘拐婚などの文化。参考文献も巻末にたくさん載っており、この作品を書くにあたって綿密に調べて臨んだのだろうと窺えた。それをファンタジー作品に落とし込む描写力。すごい。尊敬しかない。
あまりにもリアルな描写なので、ナサカの割礼シーンや初夜、集団レイプは読んでいて辛いほどだった。でもそれも、ナサカという人物を描くうえで必要不可欠な描写だったのだと思う。容赦のない文章が、読者をナサカに感情移入させてくれる。文字にぶん殴られるという新たな体験をした気分です……、、、
「女」というしがらみに苦悩するふたりの女性の、けれども普通の女への憧れを持つ一方、それを素直に飲み下せないという葛藤。物語に込められた意図やテーマのすべてを汲み取り、理解することは私には難しい。けれども、人の意見に流されがちな私が、あたりまえに押し付けれられる性別の役割に疑問を抱き、その理不尽さを考えるきっかけになった作品でした。
フォロガングと生まれた命に、幸多からんことを祈らずにはいられない。
胸が揺さぶられるような物語でした。ありがとうございました!
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